ドリームフォニー オーケストラ
創立20周年記念公演 - フォルモサ台湾からの旋律
曲目紹介 楊陳德/山桜
作曲者は2011年に9ヶ月の時間を費やし、台湾の三芝にある原種の山桜を描く交響詩篇全曲を完成させた。完成後、2011年の12月18日の音楽会で初披露し、作曲者自らが指揮棒を執った。曲は以下の三つの楽章に分けられている。
第一楽章:山桜の夏
夏の日の庭の山桜とメジロが鳴いている風景をチェロのソロによって描き、その後、6/8拍子で「メジロの踊り」を表現し、最後はまたチェロで「山桜」を締めくくっている。悲しい「山桜」と明るい「メジロの踊り」を合わせ、緩急をつけたことによって、聴き手に面白さを伝えている。
第二楽章:桜の森で漫歩
三芝と言えば数多くの桜がある場所である。この楽章は桜の森を漫歩する時の楽しさを描いた、ゆったりとした美しい楽章である。前奏の後、第1テーマでは弦楽器の各パートの交代で爪弾き(pizzicato)をしながら演奏し、第2テーマに入るとテンポが速くなる。これは、歩道を曲がった際に大きな桜の森を発見し、その感銘を受けた時の心情を描いている。
第三楽章:零れ桜
季節の移り変わりにつれ、桜がはらはらと散っていく美しい景色を描いている。ABA三段式の楽章であり、初めは弦楽器と木管楽器で零れ桜の風景を表現している。チェレスタ、フレンチ・ホルン、トランペットの順で演奏し、愉快に感じるメロディーでありながら、どこかで聞いたことがある曲といった雰囲気を醸し出している。実はこれは、日本民謡である「桜」に基づいてアレンジされたものである。前半と後半の間で暗いメロディーに変わり、「山桜」と日本民謡「桜」を巧妙に調和させている。曲の後半では、最初の桜の愉快なテーマが再び現れ、弦楽のリードによって全曲を華やかに締めくくっている。
曲目紹介 楊陳德/ピアノ幻想協奏曲《雪山への追憶》
歳を重ねれば重ねるほど、自分の生まれた土地の大切さを感じる。2007年に作った《望春風幻想曲》は作曲家鄧雨賢先生へのオマージュであり、昔の台湾との繋がりでもある。2009年の《淡水河1986》は20歳頃に淡水河畔で暮らしていた、あの忘れられない日々である。2011年の《山櫻花》は、近年、三芝で隠居をしている間に見た周りの景色と台湾原種の山桜に対する描写である。作曲者はずっと台湾の山岳をテーマに曲を作りたいと思っていた。少し前に古い写真を整理していた時、不意に30年前のまだ17歳の自分が雪山登山隊に参加していた頃の写真を見た。辛さを乗り越えてやっと高さ3,884メートルの雪山の山頂に立った時の思い出が一瞬で溢れ、幻想協奏曲《雪山への追憶》の創作のきっかけとなった。
第一楽章:〈雪山の伝奇〉 アレグロ
雪山の麓で、ガイドが語る雪山の絶景と数々の伝説に人々はつい聞き惚れてしまう。管弦楽が奏でる壮大な雪山の序奏の次に、ピアノソロで神秘的かつ伝説的な第一テーマを弾き出し、互いに交差する……。
第二楽章:〈雪山の美しい景色〉 歌のようなアダージョ
雪山の絶景が次々と浮かぶような第二テーマは、ピアノと管弦楽が優雅で美しい旋律を奏でている。中間の2つのテーマは豪華絢爛なピアノテクニックで次第に発展し、変奏する。
第三楽章:〈369山莊的清晨〉 アンダンテ
雪山山脈で最も高い休憩所の369山荘で一夜を過ごす。早朝の小屋の外は雲と霧に包まれている。静かな朝、鬱蒼とした森、まるで夢幻世界に入り込んだ感じがする……。前奏の弦楽が静かな山の早朝の幕を開け、ピアノソロはゆっくりと楽曲に入り、歌のような優美な旋律は木々の香りのような爽やかな気持ちにさせる。
第四楽章:〈雪山主峰〉 アレグロ
連日の辛さを耐え、やっと山頂にたどり着いた。標高3,884メートルの雪山主峰に登り、山々を見下ろした瞬間、すべての辛さが吹き飛ばされた……。ピアノが奏でる絶え間ない音符は、まるで険しい山道で管弦楽をリードするように進んでいく。ここで第一楽章<雪山の伝奇>が繰り返され、山頂はすぐそこだと伝えている……。ピアノと管弦楽が競合しながら高まっていき、やっと山頂まで登ることができた。曲の最後で再び雪山の伝奇が奏でられ、激しい勢いの中で、全曲が終わる。
曲目紹介 楊陳德/第一番交響曲《夢幻の間》
中国崑曲でよく知られている明の時代の湯顕祖の名作『牡丹亭』の一部から創作され、そのインスピレーションによって作られた交響曲である。南宋の城主、杜寶の娘である杜麗娘が許可なく花園に入り込み、まどろみの夢の中で逢ったことのない書生の柳夢梅と契りを結ぶ。夢から目覚めてもずっと彼のことを忘れられず、恋の病にかかってしまい、鬱の果てに命を散らした物語である……。この名作は、明朝ロマン主義劇曲における湯顕祖の代表作である。本曲は杜麗娘と柳夢梅の生離死別の恋物語により、反封建礼教、自由恋愛と個性の解放を求める主張を称える曲であり、4つの楽章で構成されている。
第一楽章〈驚き夢〉 モデラート 奏鳴曲の形式
杜麗娘は侍女と一緒に後花園に遊びに行った。麗娘は疲れて眠ってしまい、夢の中で書生の柳夢梅に出会い、恋に落ちた。しかし夢から醒めて、全ては夢だったことに気づき、とてつもない喪失感を覚えた。「夢境」を代表する前奏のあと、杜麗娘と柳夢梅のテーマが順に演奏され、「夢境」と混ざり合って発展し、2つのテーマが再び現れる。ここで第一楽章は終了する。
第二楽章〈尋夢〉 アダージョ 歌曲形式
杜麗娘は再び後花園を訪れ、夢の中で見た一木一草を探しながら、愛しい人を思う……。夢から醒めた後、杜麗娘の柳夢梅への気持ちは「尋夢」(夢を探すこと)となり、クラリネットソロで奏でられる。
第三楽章〈遊園〉 軽快な舞曲
原作では〈驚きの夢〉の前の話であった。杜麗娘は侍女の春香の誘いに乗って、初めて内緒で後花園を訪れた。そこは花々が咲き乱れ、鳥たちが群れを成し、春の情景であった。深窓の令嬢であった彼女は憂鬱な気分から解き放たれ、心の扉が開いた……。変奏後の杜麗娘のテーマは各パートによって順に演奏され、悠然と、かつ軽快に楽曲の間を往来する。
第四楽章〈夢幻の間〉
第四楽章は作曲家の本交響曲における最終探索を表現している。夢と現実の間で、夢は現実の如き、現実もまた夢の如く。本楽章ではソプラノ独唱が杜麗娘を演じ、再び第二楽章の「尋夢」のテーマを演唱する……。杜麗娘がこの世から去る前に見た夢と現実の景色が融合し合い、一体となる。曲の最後に杜麗娘と柳夢梅のテーマが再現され、真実と夢の境界が曖昧になり、二度と見分けることができなくなる。